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朝日新聞(2015年2月15日)

廃炉支援事業を強化 原電、持ち株会社化検討

2015年2月14日05時00分

原発専業の日本原子力発電(原電)が、東京電力福島第一原発廃炉を支援する体制づくりに動き出した。持ち株会社に移行し、福島原発廃炉を手伝う新会社を傘下に置く方向で検討する。東電は支援に見合った代金を支払う一方、代わりに原電から電気を買う契約に基づく「基本料金」は大幅に減額する方向で調整する考えだ。

 

 原電はまず、来年度にも福島第一原発廃炉作業を手伝う技術者を100人規模で送り込む方向で検討を始めている。ただ、東電との共同作業が本格化すれば、汚染水漏れなどの事故が起きた場合、賠償責任が原電におよぶ可能性も出てくる。

 そこで、当面は東電などとの契約を工夫して責任がなるべく及ばないようにする一方、将来的には、持ち株会社の傘下に福島支援の別会社を設け、責任をより明確にすることを検討しているという。新会社の設立時期などは未定だが、こうした方針を年度内にもまとめる再建計画に盛り込む方向で検討している。

 原電が福島支援に乗り出す背景には、筆頭株主東電からの強い要請がある。

 原電は、東電関西電力など電力5社に電気を売る卸電力会社だが、福島第一原発事故で自社の原発はすべて止まった。発電ができなくなったため、電力5社が原発の維持管理費などの名目で「基本料金」を支払い、経営を支えてきた。総額は2013年度で計約1200億円。東電は最大の410億円を支払う。

 東電では、社外取締役を中心に、基本料金の支払いに難色を示す声が強まり、原電に経営再建策の提示を求めていた。福島への技術者派遣はそのひとつだ。ただ、原電の敦賀1号機(福井県)は運転開始から44年、東海第二は36年と古く、比較的新しい敦賀2号機も真下の断層が活断層と指摘されるなど、再稼働の見通しは立っていない。このため、基本料金は大幅に削られる見通しだ。

 

 ■政府、原発「受け皿化」構想も

 持ち株会社化は福島支援のためだけではない。

 原電は、東海原発茨城県)の廃炉で10年以上培った技術を生かし、他電力の廃炉で技術支援や助言を請け負う「廃炉支援ビジネス」を強化する考えだ。ベトナムでの原発建設で現地調査を任された経験をいかし「輸出支援ビジネス」も進める。将来的には、新会社として持ち株会社にぶら下げることも検討する。

 ただ、政府内には原電を原発の「受け皿会社」とする構想もある。老朽化で廃炉となる原発がこれから増える一方、2016年からの電力自由化が進むと、巨額の安全対策と廃炉費用がかさむ原発は、電力会社の経営にとって「重荷」となる可能性もあるからだ。

 原電は国内で唯一、沸騰水型炉(BWR)と加圧水型炉(PWR)の両方の原子炉をもつ。両タイプのノウハウを蓄積しているだけに、受け皿会社をつくる場合の有力候補となる。政府内には「原発を持つ電力会社が多すぎる」との声があり、原発再編の引き金になる可能性もある。

 だが、政府が描く再編構想には「東電に都合がいいだけで、他にはメリットがない」などと、東電を除く他電力の反発が強い。

 (古賀大己、大津智義)