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福島民報2015年2月15日

第2部営業損害(13) 膨れ上がる補助金 国の支援 延長不可欠


 東京電力福島第一原発事故は避難区域の医療態勢に大きな打撃を与えている。

 避難指示解除準備区域にある南相馬市の市立小高病院は昨年4月、一部外来の診療再開にこぎ着けた。しかし、それ以外の避難区域内の医療機関は再出発に踏み出せていない。避難区域はいつ解除されるのか、住民は戻ってくるのか。経営をする上で、不安要素ばかりが浮かび上がる。多くの経営者は営業損害の賠償を受けるなどしてしのぐ。

 「再開に向けて最大限の支援をしたいのだが...」。県庁西庁舎7階の地域医療課。県内の医療体制充実を担う部署だ。医療機関は住民帰還に向け、重要な社会基盤となる。主幹兼副課長の末永宏之さん(55)はもどかしさをにじませた。


 原発事故に伴い放射性物質が拡散した。それに伴う避難は長期化が避けられない。

 県は原発事故から1年を待たずして平成24年2月に「県浜通り地方医療復興計画」を策定。計画に基づいて医師や看護師の確保など双葉郡を含む浜通りの医療機関を支援している。このうち、24年度から避難区域などからの医療機関の移転再開に施設・設備の整備費用を5分の4まで補助する「警戒区域等医療施設再開支援事業」を開始した。地域医療崩壊への危機感が手厚い補助となった。

 24年度は5件、25年度は7件への補助が決まった。ただ、本県は東日本大震災原発事故からの復興を目指している。除染や社会基盤復旧など直面する課題解決への支出が相次ぐ。

 補助申請は26年度も相当数に上ることが見込まれた。大規模な病院の移転費用は巨額に上る。それに伴い、補助金支出の増大は避けられない事態となった。

 幅広く医療機関を支援したい-。県は苦肉の策として補助上限を設定するしかなかった。「再開に向けてできる限りの支援をしたい気持ちはある。でも財源にも限りがある」

 県の支援事業の財源となっているのは国からの交付金。しかし、その期間は27年度までだという。県は国に対し延長を要望しているが、明確な回答はない。末永さんは避難区域を中心とした地域医療の未来を憂える。「(避難区域のほとんどの病院が移転再開していない)現状から考えても交付金の期間延長は不可欠だ」


 避難指示解除準備区域の南相馬市小高区にある小高赤坂病院は、相双北部への移転再開計画が暗礁に乗り上げた。警戒区域等医療施設再開支援事業に補助上限が設けられるなどして建設費用の捻出が難しくなったという。現状では従来の病院での再開しか道はない。避難区域解除や住民帰還を待ちながら営業損害の賠償金で借入金返済などの支出を賄っている。しかし、東電と政府は営業損害の賠償をあと1年で打ち切るとした素案を示した。

 損害賠償と補助金―。2つの仕組みのはざまに、地域医療の意欲ある担い手が足踏みせざるを得ないという現実が横たわる。
カテゴリー:賠償の底流-東京電力福島第一原発事故