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朝日新聞2015年2月19日


発電コスト再検証 経産省専門家会議が議論開始:朝日新聞デジタル

経済産業省は18日、原発再生可能エネルギーなど電源ごとの発電コストを再検証する議論を始めた。将来の電源構成(エネルギーミックス)を決める際の前提になるもので、原発事故に伴う賠償などの費用や再生エネの導入拡大に必要な投資額をどう評価するかが主な焦点になりそうだ。

 

 ■原発 事故確率「もっと低く」

 発電コストを見直すのは民主党政権が実施した2011年末以来だ。当時の検証委員会のメンバー6人を含む計9人の専門家でつくる経産省の「発電コスト検証ワーキンググループ(WG)」(座長=山地憲治・地球環境産業技術研究機構理事)で検討する。4月にも結論をまとめ、電源構成の議論に反映させる。

 東京電力の福島第一原発事故を踏まえ、民主党政権は「事故の影響などを考えれば、原発はコストが抑えられている」として、原発のコストに事故による損害賠償や除染に伴う費用、原発を受け入れた自治体に国が支払う交付金など、従来の試算では盛りこんでいなかった費用を加えた。

 その結果、原発コストは1キロワット時あたり8・9円以上と、04年に資源エネルギー庁が試算した5・9円の1・5倍になった。損害額が1兆円増えるごとにコストは約0・1円ずつ増えるとして、コストの上限額も設けなかった。

 だが、この日の初会合では、委員から見直しを求める声が相次いだ。約40年に1回とした前回試算の事故の発生確率について、地球環境産業技術研究機構の秋元圭吾氏は、電力各社が安全対策を強化していることを理由に確率を低くするべきだとの考えを示した。

 原発事故後、電力各社が投じた安全対策費は2兆円超にのぼる。どこまでを原発コストとして見積もるかは今後の課題になる。国の原発立地の交付金や研究機関への補助金を、どこまで原発コストに含めるかも議論になりそうだ。

 

 ■再生エネ 「送電網の費用、重要」

 太陽光や風力など再生エネの発電コストをどう見直すかも大きな論点だ。

 12年7月から再生エネの電気を固定価格で買い取る制度(FIT)が始まり、太陽光が急増した。ところが、再生エネは天候によって発電量が左右されやすいため、大量に受け入れるには送電網の増強などが必要になる。再生エネの発電量が増えすぎた時に、安定して発電できる火力を抑えるなどして調整する対策もしなければならない。

 こうした送電網を安定化させるための費用は、前回の試算には含まれていないため、座長の山地氏は「系統(送電網)安定化の費用は重要だ」と指摘。そのうえで、再生エネの発電コストに含めるのか、発電コストとは別の費用として示すのかは、今後検討するという考えを示した。

 また、FITの買い取り費用は電気料金に「賦課金」として上乗せされている。原発立地の交付金原発の発電コストに入れているため、「FITの賦課金の一部も再生エネの発電コストに含めるべきだ」との意見もあった。そうなると、再生エネのコストが上がる要因になる。

 このほか、価格変動が激しい原油価格をどう見通すかも議論になりそうだ。

 (大津智義)