朝日新聞<解説>被災者の不満あらわ 原発賠償訴訟、原告1万人規模 福島第一2015年5月5日05時00分
もっともな根拠に基づく怒り。
もっと報道してほしいし、取り上げてほしい。
① 事故の責任の所在がはっきりしないことにも被災者は不満を募らせている。
② 事故による被害は福島を最後にしてほしい
(以下記事)
東京電力福島第一原発事故の被災者らが起こした集団賠償訴訟の原告の数が1万人規模になった。原発事故の償いで、被災者らの納得を十分に得られていない実態を示している。
公害裁判に詳しい立命館大法科大学院の吉村良一教授は、1万人という規模について「事故後につくられた賠償の枠組みの限界を示している」と指摘する。
例えば、政府の原子力損害賠償紛争審査会は2011年8月、賠償の目安となる中間指針をまとめたが、被災者の声を十分聞いたとはいえない。とくに自賠責保険を参考に1人あたり月10万円の避難慰謝料が決められたことに、「納得できない」とする原告が多い。
政府によって一方的に避難指示区域などが設定されたとの不信感も強い。さらに、その区域以外の住民や自主避難者たちへの賠償や支援策が「極めて不十分だ」との声も多い。
事故の責任の所在がはっきりしないことにも被災者は不満を募らせている。事故時の賠償方法などを定めた原子力損害賠償法は、過失の有無にかかわらず事業者が賠償するため、東電の責任はあいまいなままだ。事故を「人災」とみる原告らの思いと賠償の枠組みとの間に溝がある。「国策」として原発を進めてきた国が責任を認めようとしないことへの不満も根強い。
集団訴訟は形のうえでは慰謝料を求めているが、訴状の一つには「事故による被害は福島を最後にしてほしい」との原告の思いが記されている。原告らの本当の狙いは原因と責任を明確にし、原発事故を二度と起こさせないことにある。
(編集委員・小森敦司)