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福島第1原発事故:福島・浪江住民100人、集団提訴へ 帰還困難区域で初 毎日新聞 2015年05月14日 東京夕刊

http://mainichi.jp/shimen/news/20150514dde001040079000c.html

 東京電力福島第1原発事故を巡り、避難区域の中で最も放射線量が高い「帰還困難区域」(年間積算放射線量50ミリシーベルト超)に指定された福島県浪江町津島地区の住民が、帰還に向けた除染計画も策定されず古里を奪われたとして、国や東電を相手取り損害賠償を求める集団訴訟を起こす。約100人が参加する見通しで、今夏にも福島地裁いわき支部に提訴する。帰還困難区域の地区住民が集団提訴するのは初めて。賠償請求額は検討中。

 津島地区は福島第1原発の北西約30キロにある山林地帯。米、タバコ栽培などの農業や林業、酪農が盛んで約1400人が暮らしていた。住民らは訴訟を通じ、何世代にもわたり築き上げてきた田畑や地域の伝統文化、地域コミュニティーが破壊され、元に戻らない現実を訴える方針だ。長期間にわたり古里を奪われた精神的苦痛に対する慰謝料に加え、徹底した除染による原状回復も求める。

 提訴を決断した要因の一つに、浪江町民約1万5000人が申し立てた国の原子力損害賠償紛争解決センターの裁判外紛争解決手続き(原発ADR)が不調となっていることがある。

 センターは昨年3月、東電が現在支払っている1人当たり月10万円の精神的賠償を15万円に増額する和解案を提示したが、東電は他の自治体との公平性などを理由に拒否し続けている。和解案に法的拘束力はない。

 訴訟に参加予定の住民は「和解案を拒否され、それを許している国に不信感が募った。除染を含め責任を取らせるため決断した」と話している。

 帰還困難区域について環境省は現在も除染計画を示していない。自民党東日本大震災復興加速化本部は「避難指示解除準備区域」(年間積算放射線量20ミリシーベルト以下)と「居住制限区域」(同20ミリシーベルト超50ミリシーベルト以下)の避難指示解除を2017年3月までに求める提言案をまとめたが、帰還困難区域は対象外。

 提訴を準備する弁護士によると、地区住民による集団訴訟は、旧緊急時避難準備区域(同原発20〜30キロ圏)の同県田村市都路地区の約340人が「地域共同体が崩壊した」などとして計37億円の損害賠償を求めているが、帰還困難区域では初めて。【土江洋範】