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愚か者たちの川内原発「再稼働」全舞台裏 「日本が滅びるかも…」あの恐怖を忘れていいのか

実際に悪魔の所業のような「核燃料リサイクル」などを本気でしているのは日本だけ。

他の欧米諸国はすでに危険すぎて撤退している。

この列島の災害の多さからして、廃炉はおろか、再稼働すら信じがたいにもかかわら

ず、もしこのコラム通りにアレが動き始めるとしたら、

この国の財政はさらに逼迫する。

なぜなら、核はもう「夢のエネルギー」ではないことを全世界が認知しており、

認知できないのは「利権で生きている金の盲者」だけだろう。


gendai.ismedia.jp

国民の大半は再稼働に反対しているのに、制御棒は引き抜かれ、核分裂は始まってしまった。日本中を恐怖に陥れた大事故を省みることもせず、原子力政策を進める連中の面の皮はどれだけ厚いのか?

異常なまでの警備体制

「ここ3ヵ月、原発再稼働に向けた突貫工事が昼夜を問わず行われ、大きな音が鳴りやまなかった。夜中も照明はついていて、工事関係のアナウンスも流れていましたよ。その影響もあるのでしょうか、毎年、近くの海岸に産卵にやってくるウミガメが今年は姿を見せなかった」

こう嘆くのは、山下寛太さん(48歳、仮名)。山下さんは九州電力川内原子力発電所の再稼働に反対する集会に参加するため、隣接する久見崎海岸を訪れていた。

再稼働を目前に控えた原発のゲートは、警察官や民間警備員が20人ほど配置されていた。何人かは鉄柵の前で仁王立ちをして、ものものしい雰囲気だ。前の道路を通過する自動車の検問も行われ、白バイがひっきりなしに通りすぎる。

8月9日の午後には、大規模なデモ行進が行われた。警備の警察官はちょっとでも原発施設内に近づこうとするデモ隊を厳しく諫めている。

「なんで行かせないんだよ! 行かせろよ!」とどなるデモ隊を「反対車線に出ないでください!」と、押し戻す警官隊。気温が高いせいもあって、両者のイライラは最高潮に。一触即発の雰囲気だ。

警官の数はざっと200人以上。デモの参加者約1000人に比してかなりの数で、鹿児島県九州電力の再稼働にかける異様な意気込みが感じられた。

翌10日月曜日の朝には、原発のゲートを電力会社の関係者を乗せたタクシーや工事車両、原付などが数多く行きかい、稼働に向けた準備が着々と進んでいることが感じられた。

そして反対派のデモ行進や集会も虚しく、8月11日、九州電力川内原発を再稼働させた。山下さんら、再稼働に抵抗し続けた人々の声は、どこにも届くことはなかった。

'13年9月15日、福井県関西電力大飯原発4号機が停止して以来、2年近く続いていた原発ゼロの状態が終わりを迎えたことになる。

「喉元過ぎれば……」というところだろうか。

'11年3月、日本全体が原発事故の重大さと飛散する放射能に恐れおののき、国民の大半が「原子力がクリーンで安全なエネルギーだ」というウソに気付いたはずだった。

だが、あれから4年。再稼働を目論んできた「愚かで恐れを知らない人々」の計画は着実に進みつつある。広い国土を居住不可能なほど汚染した大事故への反省は欠片もない、政官財の連合体。いわゆる「原子力ムラ」は、国民の関心が薄れるのを待ち構えたように息を吹き返しつつある。

福島の事故後、原発を規制するはずの原子力安全・保安院が、原発を推進する経産省内にあることが問題になった。政官財の癒着構造を改めるため、'12年に環境省の外局として設けられたのが原子力規制委員会だった。

しかし、原発メーカーなどから多額の報酬を受け取ってきた田中知・東京大学大学院教授が、'14年に同委員会の委員に就任するなど、早くも原子力規制の中立性は、なし崩しに失われつつある。

金融機関の長としては珍しく事故直後から、原発反対を訴えてきた城南信用金庫の吉原毅相談役が語る。

電気事業連合会という組織があります。大手電力会社が資金を出し合っているのですが、任意団体であるため外部からの監督が行き届かず、不透明なおカネの流れができ上がっている。大手マスコミや研究者、国会議員などにカネを流し、原子力発電を推進するロビイストの役割を果たしています。決して表に出てこない『原子力ムラ』のネットワークは今も脈々と生き続けているのです」

ゾンビのように復活する

事実、現政権は涼しい顔をして原発推進の計画を進めている。

昨年4月、安倍内閣は第4次エネルギー基本計画を閣議決定し、原発は「重要なベースロード電源である」と発表。民主党政権時の「'30年代に原発稼働ゼロを目指す」という方針をいとも簡単に覆した。

さらに経産省は今年7月16日、「長期エネルギー需給見通し」を決定。それによると、'30年度にあるべき総発電電力量に占める原子力発電の割合は20~22%とされている。事実上の原発拡大路線の表明といってもいい。

さらに恐ろしいことに、誰の眼にも破綻が明らかな「核燃料サイクル」という巨大プロジェクトがゾンビのように復活しつつある。元経産官僚の古賀茂明氏が語る。

「これは使用済み核燃料からウランプルトニウムなどの資源を取り出して再利用するものですが、総事業費は19兆円にも上ると予想され、コスト倒れになることは明らかです。電力自由化が予定されているので、電力会社は電気料金を上げるわけにもいかず、にっちもさっちも行かなくなる。

そこで経産省は、プロジェクトを進める日本原燃を株式会社ではなく特別認可法人にして、国の関与を強めようとしている。つまり、血税を投入してまで不採算な計画を進めようとしているのです」

なんとしても原発再稼働を推し進めたい政官財の「愚か者たち」は、あの手この手で再稼働の口実をひねりだしてきた。

原発が動かないと電力が足りなくなる」という理屈がいい例だ。原発事故後、照明を電力消費の少ないLEDに切り替えたり、冷房の温度を高めにするなど、節電意識が高まることで、電力需要は減少。夏の最大電力の合計は福島事故の前に比べて1割以上減っている。

加えてこの5年で、太陽光発電の導入量は10倍近くに伸びており、もはや真夏のピーク時であっても電力が足りなくなるということはない。

にもかかわらず、日本の脱原発路線は幻と消えた——。

恐ろしいのは、これほど大きな政策決定が、ほとんどまともな国民的議論がなされないままに行われているという点だ。

'12年6月、民主党政権福井県大飯原発の再稼働を決定。この際、原発再稼働に反対する世論が巻き起こり、連日、永田町周辺では大規模な反原発デモがくり広げられた。この様子を見て、同年末の衆院選で政権を奪還した自民党は「原発再稼働を政治イシュー化したら痛い目に遭う」と肝に銘じたにちがいない。

すぐに忘れる日本人

その後の安倍政権原発政策運営は、したたかで狡猾なものだった。全国紙政治部記者が語る。

「'14年の都知事選では、小泉純一郎元総理が、細川護熙元総理を候補にして、反原発を訴えました。しかし、自民党が応援した舛添要一現都知事は原発問題を争点にすることを巧みに避け、圧勝した。

そして今夏、マスコミや世間の関心が安全保障関連法案に向かっているすきに、川内原発を再稼働させたわけです」

しかし、そもそも国民の大半はいまだに原発再稼働に反対なのだ。今年3月、東京女子大の広瀬弘忠・名誉教授が日本リサーチセンターと共に行った世論調査では、原発再稼働に対して反対が70・8%、賛成が27・9%という結果が出た。

それでも事故から日が経つにつれて、原発問題に関するマスコミの報道は減少し、人々の関心は薄れていく。折に触れてコラムなどで原発廃止を訴えてきた作家の池澤夏樹氏が語る。

原発政策に反対するには、核エネルギーがいかに危険で人の手に負えないものであるかということを言い続けるしかない。しかし、それはとても難しいことです。私自身、新しい理屈や言い回しが見つからない限り、同じことをくり返して発表することは避けてきました。

日本は古来、地震津波など自然災害の多い国でした。災害で多くの人が亡くなって、嘆き悲しみ、しかしそれを乗り越えるために、すべて忘れて立ち上がってきた。戦争の責任や、明らかに人災である原発事故の責任も、当初は問題になっても、やがてうやむやにしてしまう、そんな国民性があるのは確かです」

苦しみや悲しみを忘れてしまいたいと思うのは人の性かもしれない。だが、それを見越して「どうせすぐ忘れる」とタカを括り、見かけだけは頭を低くしてきた原子力ムラの人々によって、原発は動きだしてしまった。

4年前に誰もが恐怖した、「日本が滅びるかもしれない」という感覚。70年前の戦争と同様、それだけは忘れてはならないのではないか。

週刊現代」2015年8月29日号より