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サブドレン計画に突き進むのはー凍土壁のため…福島第1原発:地下水放出、知事が要望書 毎日新聞 2015年08月29日 東京朝刊

東京電力福島第1原発の建屋周辺の井戸(サブドレン)からくみ上げた汚染地下水を浄化して海に放出する計画について、福島県の内堀雅雄知事が28日、安全性の確保や情報公開の徹底を求める要望書を経済産業省東電に提出した。サブドレン計画は、建屋に流れ込む地下水を減らして新たな汚染水の発生を抑える汚染水対策の一つ。全国漁業協同組合連合会福島県漁連は今月、同計画を容認している。要望書は同計画について、第三者の安全確認や水の安全性の国内外への周知などを求めた。内堀知事は「地元漁協や県漁連が苦渋の思いで容認した。運用基準を順守し、新たな風評を招かないよう効果的な情報発信に努めてほしい」と話し、計画を容認する姿勢を示した。

福島第1「サブドレン」計画 全漁連が容認
「まさに苦渋の決断」産経新聞 8月25日(火)16時41分配信

全国漁業協同組合連合会(岸宏会長)は25日、東京電力福島第1原発の汚染水低減策で、建屋周辺の井戸「サブドレン」などからくみあげた地下水を浄化して海洋に放出する計画について、国と東電に実施を容認する考えを伝えた。計画は来月にも実施される見通し。

 岸会長は同日、東電の広瀬直己社長に対し「まさに苦渋の決断だが、計画が汚染水そのものの発生量を低減させ、操業再開のステップになると判断した」と述べ、改めてモニタリング態勢の強化や風評被害対策などを東電側に申し入れた。

 広瀬社長は「申し入れをしっかりと受け止めて、計画を着実に実施していくことで、周辺漁業の本格操業に結びつけていきたい」と話した。

 計画をめぐっては、地元の福島県漁連が11日に容認の条件として、放射性物質の基準値厳守▽事故の被害が続く限り漁業者への損害賠償を維持▽多核種除去装置(ALPS、アルプス)処理水は理解を得られない限り海に放出しない-などの5項目を盛り込んだ要望書を提出。25日、国と東電が全項目に応じる形で回答し、了承された。

【究極の原発話】2015.8.15 14:46産経新聞

 東京電力福島第1原発の汚染水対策で、原子炉建屋周辺の土壌を凍らせ、地下水の流入を防ぐ「凍土遮水壁(とうどしゃすいへき)」が一向に運用できない。当初は今年3月末にも運用する予定だったが、原子力規制委員会が「待った」をかけ続けている。半年近くも延期している理由は何か。(原子力取材班)

■ゼネコンの案を採用

 汚染水の抜本策として凍土壁という工法が持ち上がったのは、平成25年5月だった。汚染水を生んでいるのは、山側から海側に流れている地下水で、現在は1日約300トンが原子炉建屋に入り込み、放射性物質に触れて新たな汚染水となる。

 建屋への地下水の流入を防ぐため、政府はさまざまな工法について、ゼネコンからアイデアを募り検討してきた。その中で、大手ゼネコンの鹿島建設が提案した「土を凍らせて地中に遮水壁をつくる案」が適切と判断した。

 凍土壁は、1~4号機を囲うように地盤を約1・5キロにわたって掘削し、地中に一定間隔で管を並べて打ち込む。管内に冷媒(マイナス40度)を循環させ、土を凍らせて壁をつくる。高濃度の汚染水がたまる原子炉建屋には、壁に開いたわずかなすき間などから地下水が流入し、汚染水の総量が増えている。この凍土壁が建屋内と外側の水の動きを遮断できるという。

■首肯しない規制委

 凍土壁が「汚染水の抜本的な抑制策」と見た政府は、25年9月に国費約320億円の投入を決定し、政府や東電は実効性を確かめるための実験に着手した。

 しかし原子力規制委員会は、なかなか首を縦に振らなかった。国の施策にもかかわらず、「安全性と有効性を確認しておらず、認可していない」と慎重姿勢を示したのだ。

 現在は、工事の着工を認めているが、運用自体を認めていない。

 なぜなら、凍土壁を運用すれば、現在原子炉建屋にたまっている汚染水の水位が、流れ込んでいる地下水の水位と逆転し、建屋の外へ汚染水を漏らしてしまうからだ。

凍土壁の試験結果では、一部の区画の地下水位が一時的に15センチ以上も低下するなど、地下水の挙動把握の難しさも露呈した。

■サブドレンに道筋

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 ではどうしたら運用が認められるのか。

 規制委の更田豊志委員長代理は「凍土壁を運用するには、サブドレンが大前提だ。それなしでは動かさない」と言明する。

 サブドレンとは、原子炉建屋近くでくみ上げた地下水を浄化設備で処理した後、タンクに貯蔵し、放射性物質の濃度基準を下回っていることを確認した上で海に放出する計画だ。

 井戸からのくみ上げや注水で、地下水の挙動をコントロールできる。

 だが、風評被害への懸念などから漁業者から反発が続いていた。たとえ浄化したといっても、原発の水が海に流れるのは強い抵抗感があったからだ。

 しかし東電などの粘り強い交渉で、福島県漁業協同組合連合会(県漁連)が8月7日、サブドレンの計画を容認した。

 県漁連の野崎哲会長は「安定的に廃炉を進めることが、福島県漁業の再開の一番の特効薬になると判断した」と容認した理由を話した。

 漁連の英断に東電も「感謝し申し上げます」とコメントしており、サブドレンの容認で、凍土壁も前へ進む可能性が大きくなった。