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大熊、双葉町が緊急要望  2015/05/29 09:33 福島民報

中間貯蔵パイロット 完了時期見通し立たず 大熊、双葉町が緊急要望

 

 東京電力福島第一原発事故に伴う除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設のパイロット(試験)輸送で、双葉郡田村市の9市町村を対象にした先行搬入は、完了時期の見通しが立たない状況になっている。輸送ルートの調整難航などが原因。施設建設に向けた地権者交渉も進んでおらず、本格輸送への影響を懸念する声も出始めた。大熊、双葉両町は28日、環境省に課題解決を急ぐよう緊急要望した。

■見えない出口
 環境省、県の関係者は今年3月に試験輸送が始まった当初、先行搬入の完了目標を「6月末までに」としていた。しかし、28日時点で試験輸送が始まったのは大熊、双葉、田村、富岡の4市町のみ。残る広野、川内、楢葉、浪江、葛尾の5町村は未定のままだ。
 1市町村当たり約千立方メートルを持ち込む計画だが、搬入には一カ月程度かかるとみられ、6月末までの完了は困難な状況だ。
 同省は27日、浪江町の行政区長約40人を集め、説明会を開催した。輸送ルート案を示しながら理解を求めたがまとまらず、結論は6月中旬の次回会合に持ち越された。町の担当者は「行政区長は県内外に避難している。またすぐに集まって、とはいかない」とため息をつく。

■いら立ち
 「地権者から苦情が届いている。環境省の取り組みは不十分と言わざるを得ない」。搬入を受け入れた大熊町の渡辺利綱町長、双葉町の伊沢史朗町長らは28日、環境省望月義夫環境相に苦言を呈し、用地交渉などで地権者への丁寧な対応を徹底するよう迫った。
 道路整備など本格輸送に欠かせない対策も遅れており、早急な取り組みを求めた。
 本格輸送を開始するには、除染廃棄物を保管する広大な用地確保が必要条件となる。しかし、同省はいまだ進捗(しんちょく)状況を明らかにしていない。地元関係者は「難航している証拠」と腹のうちを探る。
 要望の背景には、このままでは両町や県の復興が滞るとの危機感があるとみられる。しかし、望月氏は、地権者との交渉担当者を増員するとしただけだった。
 会談終了後、渡辺町長は「国への不信感が続いており、施設建設が停滞すると心配している」。伊沢町長も「施設建設だけでなく、今後の本格輸送も非常に厳しい状況になりかねない」と表情を曇らせた。

■県の役割
 こうした中、県内首長からは、県が広域自治体としての役割を果たすべき、との意見も出ている。24日、県庁で開かれた県内市町村長と内堀雅雄知事との意見交換会。県市長会長の立谷秀清相馬市長は、住民の反対で輸送ルートの選定が難航している自治体があることを踏まえ「大熊、双葉が大変な決断をしたのに、除染土が(地元を)通ることに文句なんか言えない。県が市町村を説得するなど、もう少し関与してほしい」と求めた。
 翌25日の定例記者会見で内堀知事は「(用地交渉や試験輸送の進捗に)はかばかしくないという懸念があるのは事実。不安に応えられるよう努力を続ける」と述べたが、具体策の検討はこれからだ。

【背景】
 中間貯蔵施設への除染廃棄物の搬入は今年3月13日に始まった。本格輸送に向け、ルートの安全確保や周辺環境への影響などをチェックする試験輸送と位置付けた。環境省は1年程度をかけ、除染計画を策定している県内43市町村の除染廃棄物を約千立方メートルずつ運び込む計画。本格輸送の開始は来年度以降を目標としている。

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