核燃サイクル、国関与強化 再処理事業を監督下に 電力会社撤退防ぐ 2015年9月1日05時00分朝日新聞
いまー決断する時だと思う。
結局「核燃料再利用」ができないことが明白になれば、
再稼働はできない。
ゴミ捨て場なく、ゴミを生産してきたこれまでを止めるなら今。
原発の使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル」の中核である再処理事業について、経済産業省は31日、いまの株式会社から新たに創設する認可法人に移し、国の監督下に置く案を有識者会議に示し、大筋で了承された。来春の電力自由化後も電力会社の撤退を防ぐ「苦肉の策」だが、難航する核燃サイクルの先行きは見通せないままだ。
「原子力事業環境整備検討専門ワーキンググループ」で示されたのは、電力会社が新たに同省所管の認可法人をつくり、事業の実施主体になる枠組みだ。電力会社が出資する日本原燃は株式会社のまま残り、認可法人から事業の委託を受ける方向で検討する。
実施主体を認可法人とすることで、国の許可なく解散できないようにする狙いだ。
再処理費用の徴収を確実にするため、電力会社には、使用済み核燃料の発生時に費用を拠出することを義務化する考えも示した。
経産省が「国の関与」に踏み込むのは、来年4月に電力販売の全面自由化を控える中、総額12・6兆円を見込む巨大な再処理事業を破綻(はたん)させないためだ。
大手電力の「地域独占」が崩れて事業者間の競争が激しくなれば、「論理上は破綻することもありうる」(経産省幹部)。負担が大きい再処理から手を引く電力がでる可能性が懸念され、株主への説明責任にさらされる電力会社からも国の関与を強めるよう求める声が出ていた。
新たな案に対しては、委員からは「合理性のある提案だ」などと評価が相次いだ。同省は年内に具体的な制度設計を詰め、来年にも関連法を整備する方針だ。
ただ、この先さらに膨らみかねない再処理の事業費を、どう負担するかという課題は積み残しのままだ。
原燃が建設する青森県六ケ所村の再処理工場は、当初の完成予定から20年近くたってもまだできていない。完成時期は22回も延期され、建設費は約7600億円から約2・2兆円に膨らんだ。電力会社は原燃に対し、毎年3千億円近くの運営費を負担し、債務保証も約8800億円に上る。
国は今回の案で再処理事業への「必要な関与」は打ち出したものの、電力会社の「資金繰り」を国が支援するかどうかは明らかにしていない。経産省は「実施主体はあくまで事業者。国が前面に立つことはない」と距離を置く。委員からも「対症療法的な見直し」との指摘が出た。
■プルトニウム、行き場ないまま
再処理事業を認可法人が担うことで、迷走が続く核燃料サイクルの道筋が立つわけではない。仮に再処理工場が稼働したとしても、使用済み核燃料から取り出したプルトニウムの行き場がないためだ。
プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料に加工し、ウランをプルトニウムに変えて発電しながら、燃やした以上の燃料を生み出す「高速増殖炉サイクル」をつくるのが、当初想定していたプルトニウムの「行き場」だ。しかし、原型炉である「もんじゅ」は、1995年にナトリウム漏れ事故を起こすなどトラブル続きで、実用化のめどが立たない。
代わりに国が核燃料サイクルの柱と位置づけた「プルサーマル」の見通しも不透明だ。MOX燃料を原発(軽水炉)で使うものだが、プルサーマル発電する原発が何基、再稼働するかは見通せない。
欠席した有識者の委員からは「再処理事業をきちんと評価・検証すべきだ」との意見書が出された。
原子力問題に詳しい反原発の伴英幸・NPO法人原子力資料情報室共同代表も「再処理が必要かどうかを議論すべきだが、事業の維持ありきで話が進んでいる」と疑問を投げかける。(大津智義)
・高速増殖原型炉「もんじゅ」はトラブル続きで実用化が見えず
・高速増殖炉サイクルの代わりにMOX燃料を原発(軽水炉)で使う「プルサーマル計画」の見通しも不透明