NEVERまとめより(転載)福島原発の最新状況
■2015/5/26 16万3000トン再浄化必要/地上タンクの汚染水
東京電力福島第1原発の地上タンクに保管している全約60万トンの高濃度汚染水の放射性物質を極力減らす浄化処理計画で、全体のうち、27%に当たる約16万3000トンで再浄化が必要な見通しとなった。政府が25日、いわき市で開いた廃炉・汚染水対策現地調整会議で東電が報告した。東電は一部で再浄化を始めているが、完了の時期は示していない。
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■2015/3/26 作業員、線量超過相次ぐ 170人超現場離れる
労働安全衛生法は、原発作業員の被ばく線量限度を5年間で100ミリシーベルトとした上で、年間上限を50ミリシーベルトと定めている。
福島第一原事故が起きた平成23年3月から今年1月までの約3年10カ月で、4万1170人が作業員として同原発構内で働いた。このうち、被ばく線量が累計で100ミリシーベルトを超えた174人が現場を離れた。
東電の協力企業の多くは、法令限度を超える前に作業員を被ばく線量が少ない別の部署に配置転換している。このため、被ばく線量が50~100ミリシーベルトとなった2081人の大半は他の職場に移ったという。時間の経過とともに、被ばく線量が上限に近づく作業員は今後、さらに増えるとみられる。
国際放射線防護委員会(ICRP)は、放射線業務従事者の5年間の年間平均許容被ばく線量を20ミリシーベルトに設定している。協力企業社員として福島第一、第二両原発で約20年間、作業員の被ばく管理に当たった男性(57)は「協力企業は、被ばく線量が年間20ミリシーベルトを超えた作業員を原発構内での仕事から外す傾向にある」と明かす。
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事故発生から4年が経過し、福島第一原発構内の放射線量は低下している。しかし、今後は廃炉作業が本格化し、放射線量の極めて高い原子炉建屋付近などでの作業が増える。
27年度には、事故を起こした3号機の使用済み燃料プールからの燃料取り出しが予定されている。作業員の被ばくを避けるため、主に遠隔操作で行われるが、準備に伴う機材の設置などで作業員が原子炉建屋に近づくことは避けられない。
こうした状況を踏まえ、県原子力対策監を務める角山茂章氏(71)は、廃炉が完了すると見込まれる30~40年後を見据えた長期的な人材確保の仕組みづくりが不可欠だと指摘。「被ばく線量が増えて熟練作業員が現場を離れれば、廃炉業務は滞ってしまう。国と東電は対策を急ぐべきだ」と求めている。
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■2015/3/26 放射性物質 管理目標の3倍海に
東京電力は二十五日、昨年四月からの一年ほどの間に、福島第一原発から七四二〇億ベクレルの放射性セシウムが海に漏出していたとの試算を明らかにした。この量は、東電が原発事故前に定めていた年間の管理目標値(二二〇〇億ベクレル)の三倍超に当たる。
先月、福島第一の排水溝から汚染水が外洋に流出し続けている問題が発覚し、東電はどれくらいの影響があったのか原子力規制委員会から報告を求められていた。二十五日の規制委検討会で、東電は漏れ続ける汚染水の測定を始めた昨年四月十六日から今年二月二十三日まで、濃度や溝を流れる水量から試算した。最もセシウムの量が多かったのは、1~4号機の海側敷地から護岸を通じて漏れ出す地下水で、五一〇〇億ベクレル。次に多いのは、建屋脇を通って外洋に直接流れ出すK排水溝の二〇〇〇億ベクレルだった。ほかに三本ある排水溝は一〇〇億ベクレル前後だった。
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東電は建屋に降り注いで汚染された雨が排水溝の主な汚染源と強調するが、会合で、規制委の更田(ふけた)豊志委員は「(高濃度汚染水がたまる)建屋からの可能性も含め、早急に汚染原因を究明するべきだ」と求めた。
東電は放射線量の高い地点では、無線式の超小型ヘリやクレーンを使い、早急に調査を進める考えを示した。ただ、東電は、排水溝からの漏出量は、護岸からの量に比べて「十分の一程度」と強調し、自らが放置してきた排水溝の汚染水問題が深刻ではないかのような説明をした。
参考として資料に添付した原発近くの海水のモニタリング値にしても、実際には振れ幅があり高いセシウムが検出される日もあるのに、その値は記さず、ゼロと誤解されやすい「検出限界値未満」だけを記載した。
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東京電力が福島第1原発2号機の原子炉建屋屋上にたまった汚染雨水の外洋流出を把握しながら公表していなかった問題で、経済産業省も昨年12月に東電から問題の把握につながった放射線量の測定データを示されたにもかかわらず、公表を指示していなかったことが5日、分かった。公表を指示しなかった理由は「(東電が)公表しているものと思い込んでいた。報告を受け原因究明や対策を検討していた」としている。同日開かれた自民党会合で糟谷敏秀資源エネルギー庁廃炉・汚染水特別対策監が明かした。出席した国会議員からは「東電も悪いが、経産省も悪い」と経産省の対応を批判する声が上がった。同党は今後、汚染水対策の問題点や改善策について政府に提言する見通し。
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■2015/2/25
菅義偉官房長官は2月25日に行われた記者会見で、福島第一原発から高濃度の汚染水が海に流出していた問題について、「港湾外への汚染水の影響は完全にブロックされている」と述べた。
問題となっていたのは、福島第一原発2号機の原子炉建屋の屋上に溜まっていた比較的高い濃度の汚染水が雨どいを通じて排水路に流れ込み、港の外の海に流れ出していたというもの。東京電力はこの問題を4月には把握していたが、流出を防ぐ十分な対策を取らず、公表していなかったと報じられた。
菅官房長官は、2014年の原子力規制委員会 ・検討委員会や、廃炉・汚染水対策現地調整会議などにおいて、東電は報告を行っていると指摘。また、排水口における放射性物質の濃度が2号機の原子炉建屋屋上のたまり水よりも低く、港湾外の海水濃度も法令告示濃度に比べて十分に低い数値だとして、「港湾への汚染水の影響は、完全にブロックされている。状況はコントロールされているという認識に、変わりない」と述べた。
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■2015/2/25
汚染水 外洋に垂れ流し 1年前に把握、放置
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例えば、昨年八月二十六日には、一リットル当たりセシウムが一〇一〇ベクレル、骨にたまりやすいストロンチウムなどは一五〇〇ベクレルと、水としては非常に高い値だった。日常的に、両物質とも数十ベクレル以上のレベルで推移している。流量は一日当たり約千七百トンに上る計算になる。2号機の建屋屋根にたまった放射性物質などが雨で流され、溝に入り込んだ可能性がある。
ほかの排水溝も、K排水溝ほどではないものの、日常的に汚染が確認され、降雨で濃度が上がる同様の傾向を示している。東電は、一昨年八月にタンクからの高濃度汚染水漏れを受け、タンク群近くのC排水溝の出口は、水が比較的拡散しにくい専用港内に付け替えた。しかし、東電は他の排水溝は対策を取ろうとせず、昨年四月以降のデータを公表しようともしなかった。
東電は、自社が実施する外洋の濃度測定で、セシウムとストロンチウムなどはほとんどが同一ベクレル以下であるとして、「外洋には影響はない」と説明している。
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東電によると、汚染水を貯蔵しているタンクからの漏洩はなく、構内側溝排水放射線モニタでも問題は生じていないことを確認したという。午前11時35分ごろに排水路のゲートを閉めるなどの対策を取った。しかし、それまでに海洋に流出した汚染水の流出量は不明としている。
午後0時半に採取した港湾内の海水からはベータ線を出す放射性物質が同3000ベクレル検出された。通常時よりも大幅に高い濃度で、汚染水流出によって濃度が急上昇したことがわかる。港湾はシルトフェンスで外洋と遮られているため、湾内の魚介類の流出入は一定程度抑制できているが、海水時自体の流出入は防げない。このためら、汚染水の一部が外洋にも流出した可能性もある。
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■2015/2/22
■2014年5月31日
福島第二原発の奇跡
増田尚宏・元第二原発所長が語る
(出典:HuffPost:http://www.huffingtonpost.jp/tomoko-nagano/fukushima-nuclear_b_5421167.html?utm_hp_ref=japan
前日の3月11日。地震発生の際、福島第二原発では4つの原子炉が通常運転されていました。大きな揺れを検知したとき、すべての原子炉は自動停止しています。増田所長が緊急対策室に入ったのは、地震から15分がたったころでした。
「その時は、確か3メートルという予報だったと思うのですが、みんなに『津波がくるから気をつけろ』と指示をした記憶があります」
しかし、現実に原発を襲った津波の高さは推定9メートル。そのまま津波は敷地を駆け上がり、最高18メートルもの高さに達しました。それまで福島第二原発では津波に襲われても、建屋内は浸水しないという想定でした。
「実際には、津波というのは瓦礫を運んでくるんですよね。その瓦礫が(建屋内)の扉
に当たって扉が変形すると。それによって中に水が入ってきた。そんなことは考えていなかった」
津波が襲った瞬間、すでに想定外の事態は起きていたのです。津波が海辺に沿って並んだ、炉心を冷却する機能をもつ建屋内に侵入していました。
「2メートル50センチくらいの水が入って、完全にポンプモーターは水に浸かった状況でした。ここのポンプが壊れると原子炉が冷やせなくなると。このままいくと、格納容器の設計圧力に達する可能性があるなと思いました。復旧するには1日も余裕がないかな、というくらいの上がり方でした」
この時点で、福島第一原発と同様に、第二原発もメルトダウンの危機に瀕していたのです。
4つある原子炉のうち、中でも1号機の原子炉建屋は地下に置かれた非常用ディーゼル発電機まで浸水し、3台すべて使えない状態。冷やす機能がまったくなくなってしまったのでした。
翌3月12日早朝。1号機の圧力抑制室の水温は100度を突破しました。ちょうどこの時間、菅直人首相が第一原発の視察に訪れています。当時、官房副長官だった福山哲郎氏のノートには、『第二、根源的な問題。海の水を循環しない』と記してあります。視察中の菅首相からの言葉でした。第二原発も非常に厳しい状況だと把握した政府は第二原発の半径3キロ圏内の住民に避難指示、10キロ圏内の住民に屋内退避の指示を出します。1号機の圧力を下げるため、最後の手段である「ベント」を行う可能性があったからです。「ベント」によって格納容器の圧力は下がりますが、それは放射性物質が外に飛び散るという最悪の状況を引き起こすことでもありました。
12日午後、第一原発で水素爆発が起きたとき、増田所長は緊急対策室にいました。
「なんとなく振動がきた気がしました。後を振り向いたらテレビで爆発のシーンが見えて。なぜ爆発したのか、理解できなかった」
第一原発と同様、メルトダウン、水素爆発の危機に直面していた第二原発で、増田所長は第一原発の状況とは異なるわずかな希望を見出しました。被災した外部電源4回線のうち1回線だけ生き残っていたのです。しかし、問題はこの1回線が炉心を冷却する建屋から遠すぎる場所にあり、建屋に繋がれていなかったことです。
増田所長は危機管理マニュアルにない「想定外の行動」に踏み切りました。なんと800メートルも離れた外部電源の1回線を、建屋まで人海戦術でケーブルを担ぎながら運ぶという指示です。ケーブルといっても、何トンもする大変重いもの。通常なら機械を使っても1カ月かかる作業を、わずか1日で成し遂げなければならないという過酷なものでした。第二原発では200人もの作業員が2メートル間隔でケーブルを担ぎ、建屋に引っ張る作業を開始したのです。
「中央制御室というのは、監視と操作というのは非常に大事な2つの役割になります。それがまったくできなかった福島第一と、しっかりできた福島第二は大きな差があったと思います」
「ベント」のタイムリミットまであと2時間。メルトダウンを目前にした12日の深夜12時ころ、作業員の決死の作業によりケーブルは建屋につながれました。第一原発と第二原発、2つの原発が爆発するという最悪の事態はこうして回避されたのです。
マニュアルにない創造力をともなう現場対応、中央制御室の電源確保の重要性、外部電源の位置。福島第二原発がメルトダウンを回避した経緯をたどると、安全管理について多くのポイントが見えてきます。しかし、現在、第二原発における対応はおろか、第一原発事故の検証でさえ不十分なまま、再稼働の議論が進んでいます。原発の再稼働論議の前に、検証すべきことがまだまだ多く残ってるのではないでしょうか。
■2014年5月29日
福島第一原発1号機
原子炉格納容器からの汚染水漏えい2箇所目特定(出典:FGW)
新たに汚染水の漏えい箇所が見つかったのは、格納容器の圧力を調節するために設置されている配管部分。配管が伸縮する部分の保護カバー(外径約80cm)のボルト穴から水漏れしていることが、調査カメラによって確認された。
漏えい箇所は特定されたが、現時点ではそれを塞ぐ作業を実施することはできていない。
東京電力福島第一原発の増大する放射能汚染水対策を推進するために導入された東芝製の多核種除去設備(ALPS)が再三のトラブルを起こしているが、東電によると、トラブルの原因は高濃度の放射能を受けてフィルターの内部が破損したためとの見解を出した。
東電はフィルターを改良型に切り替え、23日、B系統について再稼働させた。だが、放射能除去装置が放射能に弱いとなると、今後の汚染水処理のスケジュールにも影響しそうだ。
ALPSは3系統が導入されているが、処理後に放射能濃度の高い白濁水が生じるなどのトラブルが続いたため、東電は今月半ばになって3系統全部を停止し、点検していた。その結果、トラブルの原因はB系のクロスフローフィルター(CFF)3Bのパッキンが放射線で劣化し、放射性物質(主にセシウム)を含む炭酸塩スラリーが、ろ過側(処理済水側)へ移行し、下流側へ流出したと推定した。
パッキンの劣化を防ぐ対策として、B系統については、耐放射線性能の高い材質を用いたパッキンに変更した改良型CFFへ取り替えて、運転を再開した。一方、3月に停止したA系およびC系は、処理後の水について特に異常がなかったが、いったん汚染したサンプルタンク等を浄化して再開したが、B系統と同様に、パッキンが劣化すると下流側のカルシウム濃度が上昇することから、今月半ばに停止、カルシウム濃度測定を行ったうえで、フィルターのパッキン交換を実施する予定。
東電がパッキンを分解調査した結果、ガスケットの一部に欠損や微小な傷が確認され、そこから炭酸塩スラリーが流出したとみられる。汚染水漏えいの原因となった欠損部分は、放射線の強さによって生じたと推定される。東芝が最初に使用したガスケットはテフロン性で、照射試験の結果、運転から約25日間運転に相当する1000Gyで、最大応力の低下がみられ、脆化(テフロンの劣化)が表れ始めたという。さらに最大伸び美試験では、250日間運転に相当する10000Gyで劣化が明確になった。
いずれも設計基準を大きく下回る劣化度で、一種の”欠陥”といえる。東電はテフロンのガスケットをEPDM(合成ゴム)に切り替えて、様子をみるという。ALPSは試験運転中ではあるが、一か月にも満たない運転状況で、部品の劣化が生じ、汚染水が漏れるという事態は、汚染水処理だけでなく、ALPSの運転そのものも手探りで進める以外にない、という原発処理の先行きの危うさを象徴しているともいえる。